古くて新しい
住まい方。
築130年の古民家に住むまで。
ハウスメーカーでの修業を終え、ゆくゆくは経営を引き継ぐためHUCOSで働きはじめた頃。娘が小学校へ上がるのを機に、松代で家をさがしはじめ、知り合いの不動産屋から紹介されたのが、築130年の古民家でした。
古い家に住みたかったわけではなく、蔵や離れもあって住むには大きすぎるけど、造りや材のしっかりした状態のいい家だし、長野ICへ新しくつながる道に面していて交通の便はいいし、妻に「寒くなければいい」と言われて、改装することを決めました。
当時はまだ自分で古民家の改装を手がけたことはほとんどなく、設計は外注するつもりでした。ただ、滅多にない機会を生かすためにも自分でやるべきだと思い直し、父や大工さんたちと相談しながら、設計から取りかかりました。
自分でやるからには、古材をあえて見せるような、いわゆる日本様式の古民家再生はやりたくなかったので、柱は極力隠して、シンプルな壁に仕上げました。ただし梁と、煤けて真っ黒になった天井裏の壁は見えるようにしたかった。
自分が住む家なので、やりたいことは全部やってみました。おかげで家には愛着があります。いい素材を使った服がヴィンテージ品になるのと同じように、いい家は時が経つほどに味わいが増していくものだと感じています。
住み心地良好。
この家はもともと平屋ですが、2階建てに造り変えました。おそらく熱効率を上げるために一部の部屋の天井を下げてありましたが、天井板を全部剥いで梁や天井裏の壁が見えるようにしました。
気密・断熱をしっかりやり直したので、夏も冬も快適に過ごせています。
リビングとダイニングの間に仕切りはあるものの、上部は吹き抜けでつながっている。
変化の途中。
揚屋をして基礎工事を行い、耐震や気密・断熱もしっかりやり直しました。柱は全部生かしつつ、抜ける壁は抜いて間取りを変更しています。庭は植木を間引いたくらいですが、最近ウッドデッキを作りました。
ここでバーベキューをしたり、夏は犬も一緒に水遊びしたり。リビングとフラットにつながっているので、いろいろな使い方ができそうです。
⚫︎入居9年目の様子。ウッドデッキを新たに設けた。
⚫︎工事前の様子。越屋根のあるどっしりとした構え。
⚫︎竣工時の様子。一見、工事前と変わらないがスケルトン状態にして構造からやり直してある。
⚫︎外壁にウレタン断熱を施工しているところ。
⚫︎ 昔の建物は壁が少ない造りなので、耐震補強のために壁を増やした。
130年とその後の経年変化。
古民家らしさを消してシンプルにしたいと思う一方で、屋根を支える梁や、天井裏の煤けた壁は見せたいと思いました。
どうしてもつくりたかったのが梁と平行する渡り廊下。壁に飾った友人のアート作品も含めて、2階からの眺めは気に入っています。
あとはできるだけ自然素材を用いて、傷やシミも含めて風合いが増していくように。築130年とその後の経年変化が楽しめます。
⚫︎太い梁と平行に2階をつなぐ渡り廊下。
⚫︎ 無垢の床板も経年変化を見せる。
⚫︎ 玄関からリビングへつながる土間は洗い出し仕上げ。
⚫︎土間の薪ストーブが家中を温める。
松代で中古住宅をさがしていたところ、地元の不動産屋さんに紹介されました。築130年とはいえ状態が良く、長野ICにつながる新しい道に面していて、交通の便も良かった。今後のためにも自分で設計を手がけ、父や大工さんの手を借りて改装することにしました。
梁や天井裏の壁を見せる以外は、いわゆる古民家らしさは消すようにしました。柱や構造材は隠して壁はフラットに、建具枠や巾木など見える造作材は薄くして、極力シンプルになるようにしました。建具は既製品を使わず、素材やデザインを指定して、建具屋さんに作ってもらいました。以降の家づくりでも生かされています。
年に一度の煙突掃除、半月に一度くらい炉内の灰を掃除します。排気がきちんとしていれば空気を汚さず、結露もしにくいです。身体が芯から温まり、洗濯物がよく乾き、ピザも焼けるし、炎を見ると心が安らぎます。薪さえ自分で調達できれば、一般的な暖房機に比べてランニングコストはぐっとおさえられますが、薪を全量購入するのは割高になるのでおすすめしません。
大変なことはありませんが、気をつけるべきことはあります。構造に傷みはないか、雨水の侵入している箇所はないか、床下の湿気対策はどうするか。昭和以前の建物だと、基礎がなく石の上に建っている場合もあります。家ごとの状態に応じてきちんと改修すれば、安心して住むことができます。
上の娘のために寝室の一部を仕切って、専用の空間を作りました。今まで寝室で家族4人一緒に寝ていましたが、今は娘はひとりで寝ています。自分が子どもの頃は自室に引きこもって家族と距離が生まれてしまったので、布1枚のゆるい仕切りでもプライベートが確保できれば十分と思います。家族の成長や変化に合わせて、今後も住まい方を変えていくつもりです。
庭に面した部分は、こんなに大きな窓にする必要はなかった。庭の照り返しが強いし、掃除が大変。今ならもっと高性能の小さな窓にします。勝手口は使わないのでいらなかったし、24時間換気が基本なので、トイレの窓ははめ殺しでよかった。些細なことでランニングコストも、その後のメンテも変わってきます。
竣 工 | 2011年6月 |
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築年数 | 築130年(2020年時) |
家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
延床面積 | 125.47㎡(37.88坪) |
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リノベ面積 | 177.64㎡(53.63坪) |
設計・施工 | HUCOS 協同建設株式会社 |