5月15日あの熱い戦いからもう3週間ほど経ち、J3の銀河系軍団とも呼ばれてるFC岐阜をホームに迎え、観客増えるのかな?と思っていたが、あっという間に元の観客数に戻ってしまった。
この3週間、多方面の方々が信州ダービーを絶賛し、感想や紀行、試合の分析などをブログやYouTube、SNSで発信していて、その熱量はJ3では考えられないくらいの物だと感じました。
ここで同じ視点で語っても面白くないので、建築家の講演会などでよく耳にする「コンテクスト」というキーワードで考えてみる。
「コンテクスト」とは、文脈・脈絡・前後関係という意味で、建築という莫大な費用や影響力のある物をつくる際、建築家自らの勝手なデザインではクライアントを説得することは難しいが、周辺環境や社会的・歴史的なコンテクストからデザインされているとプレゼンしたほうが説得しやすい。という様な形で使われる言葉である。
本題である「信州ダービー」長野パルセイロの観客数は、まさにその試合ごとのコンテクストで変動していると考えられる。
まず長野パルセイロは、コンスタントにJ3の中・上位に居続けるが、数年に1度ギリギリ昇格出来ずにいるというチームである。
平均観客数もJ3では上から数えた方が早いが、2016年の5,018人をピークにじわじわと下がり続け、昨年は2,518人まで下がっている。
そんな中「信州ダービー」では、チケット売り切れの13,244人が来場して、その来場者一人ひとりの応援の熱意も凄く、聞いた事のないくらいの手拍子・ハリセンの音圧に鳥肌が立つような中での試合であった。
始めて見る満員の長野Uスタジアム
なぜ、ここまで「信州ダービー」に人が集まったのか、
それは、集まるべきコンテクストがあったからである。
「長野」対「松本」これは何だか分からないが、私自身小さい時から「松本には絶対に負けちゃいけない」と刷り込まれてきた。それはサッカーだけでなく野球でも市民芸術館でもなんでも負けちゃいけない。「長野には新幹線がある」「松本には空港がある」などと、何かと比べてしまうことは多いかもしれない。
その「松本には絶対に負けちゃいけない」という「強いコンテクスト」が、普段観に行かない人までも巻き込んで、長野の自慢のUスタジアムを初の満員にまで人を集めたのである。
スポーツ観戦は、コンサートや舞台などと同じように、たくさんの人が一つの場所に集まりパフォーマンスを観て感動するものであるが、そのパフォーマンスのレベルが高ければ高いほど感動するか?というと違って、素人や高校生ですら「強いコンテクスト」があるだけで感動するのである。
負けたら終わりの高校野球なんか特にそれである。高校生に比べて圧倒的に上手な地域リーグの野球を見るより、小さい時から毎日練習してきた野球少年が、この1試合で負けたら引退なんだ!という高校野球の「強いコンテクスト」が人を感動させるのである。
今後、J3にいる長野パルセイロは、その「強いコンテクスト」をどこで作り出せるか?が鍵になると思う。
正直、13,000人も集まって、ファンが増えるかと期待していたが、先日のFC岐阜戦の観客数3,180人は全くファンが増えてないのではないか?と正直落ち込んだ。
「ホーム戦は結構観に行くよ」という人が松本に比べて圧倒的に少ないであろう長野で、今回の「信州ダービー」は単発に終わってしまったが、コンスタントに8,000人くらい入るような「強いコンテクスト」を作り続けられることに期待したい。
因みに、今季から長野パルセイロを率いるシュタルフ監督は、試合のデータを分析して得点を多く取れる可能性がある戦術をしているので、観ていて単純に楽しいです。興味ある方は、是非ともUスタジアムで会いましょう!
1週間前に行ったアルウィン(こちらも信州ダービー)
中澤 政文