Introduction

欧州住宅文化と
日本の現在地

未来のための建築

欧州の建築や文化に触れて感じたことは、ビルダーとユーザーがともに「次の世代に残せる建築」を大切にしていることです。
環境負荷の少ない住宅をどう建てるか、そして資産性を含めて次世代に残す住まいとは何かを考えて取り組んでいます。住宅性能は妥協せず、窓などは最新のものを取り入れつつ、古材や再利用可能な建材との組み合わせによるアップサイクルにも挑戦しています。
ドイツを例にすると、古いものや景観を大切にする文化やDIYの習慣が根づいており、世代を超えて住み継がれる住まいが実現しています。

デンマーク/フィンユール邸
日本の住宅文化の現在地

戦後、日本は住宅供給を急務とし、その後の高度経済成長や人口増加も相まって、「質より量」を優先せざるを得ない状況となりました。
戦前は三世代での暮らしが一般的でしたが、現在は核家族が主流となり、住まいのあり方も変化しました。1980年頃からは建築基準法の改正などにより耐震性能が向上し、近年では断熱等級なども法的にアップグレードされています。しかし、ライフスタイルそのものはまだ大きくは変わっていないのが現状です。

住宅の平均寿命/日本の建築年代別住宅数 図1 : 国土交通省 平成28年度住宅経済関連データ 滅失住宅の平均築年数の国際比較 平成8年度「建設白書」
図2 : 国土交通省「平成28年度住宅経済関連データ(2023現在で戸数6,502万戸)
断熱性能へのこだわり

省エネ住宅の最先端といえばドイツです。ドイツでは、建築物の省エネ化と自然エネルギーの利用促進のために、法律の整備や財政支援が進んでいます。日本の一般的な住宅では壁の断熱材の厚みは約100mm程度ですが、ドイツでは360mmの断熱材の使用が法律で義務付けられており、住宅の総合性能は日本よりも高い水準にあります。
私たちのコンセプトハウスでは、木質系断熱材とパネルログからなる300mmの断熱層を採用し、信州大学 高村研究室のご協力のもと、壁内にセンサーを設置して継続的に温度測定を行い、製品の研究・開発を進めています。

動画を見る 信州大学 高村研究室と熱電対(温度センサー)をコンセプトハウス南北の壁面と梁上に設置した様子
動画を見る 左から、外壁/パネル木質断熱60mm/吹き込み木質断熱120mm/パネルログ120mm 合計300mmの断熱層